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お弁当箱の中には

 

叔父が70代でまだ外に出て働いていた頃叔母が言ったことがある。

「叔父さんはね、お弁当箱を戻す時にいつもご馳走さまでした、美味しかったです、と言ってくれるのよ、何でもないお弁当なのに」

それを聞いた時に、そのお弁当箱の中には二人の愛が入っているのだなぁ、と思った。

 先日、桜坂劇場で「めぐり逢わせのお弁当」を見て来た。ランチ配達システムの不具合から夫ではない相手に妻のお弁当が届いてしまい、それをきっかけに二人の間に手紙のやりとりが始まる。お弁当と手紙を仲立ちにして、いつもは心の奥底にしまってある感情を表に出していくようになる二人。 

「間違った電車に乗っても、人は正しい場所に着くことができる」とは映画の中の言葉だ。何が間違った電車で正しい場所とはどこなのか、それは人それぞれだと思う。

 叔父と叔母は80才を過ぎて、晴れて正式の夫婦となった。

                (沖縄タイムス:くさぐさ:2014.9.30)