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母との別れ

 「神様私は罪びとです。自分で自分を救うことはできません。」そう言って23年前に洗礼を受けクリスチャンとなった母は、先日神のみもとへ安らかに旅立った。

 私もまた罪びとで、人を憎む気持ちから逃れることができず、母の死を悲しむより先にそのことにとらわれ疲れている。人を憎むということは母が最も嫌うことだったから、きっと今の私を見て嘆いているに違いない、そう思いながらも私は自分を救うことができずにいる。

 そんな私を今慰めてくれているのは俳句だ。17文字に凝縮されたこの世の美しさや悲しさがしみじみと心に分け入ってくるのだ。母もまた俳句を愛していて体調を崩すまでは句会に通い楽しんでいた。母の辞世の句は「それぞれに秘することあり桜散る」というものだ。秘することはあったにせよ、間違ったことは何一つしてこなかった母は本人も確信していたように天国で楽しく過ごしているに違いない。遺された私の慰めである。

        沖縄タイムス:くさぐさ  (2015.11.17)