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ファミリーツリー

 東京で一人暮らしをする83才の母が末期のガンとわかって1年になろうとしている。要介護の夫がいる私を気遣って、あなたは来なくていいからと言われ続けてきた。「ひとりでぽかーんとしているのが楽なの」という言葉の半分は本心だろうと思うくらいに自分にも他人にもきびしい人だった。ここ最近症状が重くなり、車で1時間ほどの距離に住む弟の話しぶりも緊迫してきたのを感じ、夫を施設に預けて東京に介護に向かうことを決断した。「いいって言ってるでしょ」と断られるのを覚悟で母に伝えてみると、「来てくれるの、うれしい」という返事が返ってきて驚いた。

 母とは波長が合わないことも多く、若い頃は心を閉ざして打ち解けなかった。言いたいことは今でも山ほどあるが全部忘れてこれからの日々は優しさだけで向き合おうと思っている。喪われていく命があっても、きっとこれから受け取る命もある。ファミリーツリーは繋がっていくと信じている。

    

      沖縄タイムス:くさぐさ  (2015.9.28)